世界農業遺産とは
国際連合食糧農業機関が認定する
「農林水産業システム」
世界農業遺産は、正式名称を「Globally Important Agricultural Heritage Systems」といい、 国連のFAO(食糧農業機関)が認定する制度です。
社会や環境に適応しながら何世紀にもわたり形づくられてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化・景観・生物多様性などが一体となった重要な農林水産業システムを認定する仕組みで、2002年(平成14年)に創設されました。
認定地域は世界22カ国59地域
世界農業遺産の認定地域は2020年3月現在、22カ国59地域です。
日本では、「静岡の茶草場農法」をはじめ、「トキと共生する佐渡の里山」「能登の里山里海」「阿蘇の草原の維持と持続的農業」「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」「清流長良川の鮎」、「みなべ・田辺の梅システム」「高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム」「『大崎耕土』の巧みな水管理による水田システム」「静岡水わさびの伝統栽培」「にし阿波の傾斜地農耕システム」が認定されています。
茶草場農法とは
刈り取った草を茶園に投入
高品質な茶の生産と生物多様性が両立する伝統農法
茶草場農法とは、茶の味や香りをよくするために茶園周辺で刈り取ったススキやササなどを、茶園に投入する伝統的な農法で、草を刈り取る採草地を、「茶草場(ちゃぐさば)」と言います。
かつては日本各地で見られたこの農法ですが、生産方法や時代の変化にともない、現在では静岡県などのごく一部だけで続けられています。
人の手で維持管理される「茶草場」には、貴重な動植物が生息し、よいお茶を作ろうとする農家の営み・努力と生物多様性が両立している、世界的にも非常に珍しい事例です。
絶滅が心配される希少な動植物が生息
茶草場では、野生条件では絶滅が心配される「秋の七草」等、希少な動植物を見ることができます。
人の手によって維持管理されている草地環境は「半自然草地」と呼ばれており、多くの生物種が生息することが知られてます。
人が草を刈ることは、一見すると自然を破壊しているようにも見えますが、草を刈らずにおくと、生存競争に強い植物ばかりが生い茂ってしまい、生息できる植物の種類はかえって少なくなります。
定期的に草を刈ることにより、大きな植物が茂ることなく、地面まで日が当たるので、生存競争に弱いさまざまな植物が生息することができるのです。